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研究内容

概要 ― ユーザ参加型自律分散ネットワークの研究 ―

通信ネットワークでは長らく,通信サービスを提供する交換機・ルータと,サービスを受けるユーザ端末との間に境界が設けられ,ユーザは通信事業者に料金を支払い,ネットワークの内部を意識せずに相手に接続し通信サービスを利用する,という形態がとられてきました.しかし最近ではコンピュータの性能向上,ユーザの入手可能な通信機器(有線LANハブ/無線LAN基地局等)の高速化・低コスト化,通信ソフトウェアのオープン化等を背景として,ユーザの通信機器が中継ノードとなって自律分散的な高速ネットワークを構築できる環境が整いつつあります.具体的には,マルチホップ無線LAN技術,有線環境におけるP2P・オーバレイネットワーク技術がこれに当たります.本研究室では,この自律分散ネットワークの原理に基づいて,ユーザが「いつでも・どこでも」利用できるネットワークを従来より安価にまた柔軟に構築するための手法について研究しています.

(個別の研究テーマはメンバーのページにも記載しています)

無線メッシュネットワーク技術

無線メッシュネットワークにおけるコンテンツキャッシュの研究

マルチチャネル無線メッシュネットワーク

例えばビジネスショーなどの大規模イベントでは,参加者の多くがスマートフォンでインターネットにアクセスして関連する情報やコンテンツをダウンロードするため, 回線トラフィックが逼迫してアクセス速度が低下しがちになります.このテーマでは無線LANアクセスポイント(AP)をさらに無線でマルチホップ接続して構成する 無線メッシュネットワークを会場に設置し,各APにはコンテンツキャッシュを用意して,参加者のダウンロード頻度が高いコンテンツをキャッシュに格納するシステム を検討しています.イベントで同じブースにいる参加者は類似した情報をダウンロードする可能性が高いと考えられることから,このコンテンツキャッシュが特に有効に働くと 考えられます.人気の高いコンテンツをそのアクセスパターンの違いから,UniformコンテンツとLocalコンテンツの2種類に分類し,効率的なキャッシュ配置方式を提案しています. (学会発表スライド)


P2Pネットワーク技術

サーバ・クライアント型通信と異なり,ユーザ端末自身がコンテンツの配信・中継を行うP2P技術が注目されています.特に,ライブ映像配信サービスにおいて既にサーバに接続して視聴しているユーザが新しく接続するユーザに対して映像を中継することでサーバの配信負荷を低減するP2Pマルチキャストに着目しています.

P2Pマルチキャストはサーバ負荷の低減には有効ですが,ユーザ間のネットワーク回線を考慮せずに中継を行うとサーバから直接受信する場合と比べ経路の迂回が大きくなり,ネットワークの回線利用効率という点でみると特性が悪化する場合があります.

本研究ではP2Pマルチキャストに参加しているユーザの接続ISP情報を参照し,ネットワーク上でお互いに近い距離にあるユーザ間で中継が行われるように誘導することでネットワークの回線利用効率を大きく向上させる手法を提案し,実験により評価を行っています.



P2Pネットワーク

P2Pマルチキャストによるライブストリーミングの概念


P2Pネットワーク

実際のライブストリーミング配信サービスにおける中継経路の一例.



P2Pネットワーク

提案手法の評価実験画面例